世の中にはたくさんのコーヒー好きがいる。ぼくもそのなかのひとり。
起きて、まずやることと言えば、エスプレッソマシンの電源スイッチを入れること。食事をとったら、すぐにカフェラテをつくる。家内のぶんと、ぼくのぶん。
そしてシャワーを浴びて、服を着たら出社前にまたドリップを淹れる。まいにち。ちょっと寝坊して、一度でもコーヒーを飲む回数が減ってしまうと、なんとなく調子が狂ってしまう。そのくらい、ぼくの生活になくてはならないものがコーヒーだ。
ぼくがコーヒーを飲み始めたのは、記憶のなかでは、たぶん、幼稚園。
自動販売機で買ってもらうジュースといえば、UCCの缶コーヒー。あの、甘いやつ。あれが好きで好きで。
中学生のときにカリタのハンドミルを買ってレギュラーコーヒーを淹れたりもしたけれど、豆もスーパーで買ったやつで大してこだわりもなかった。コーヒー? まぁ、好きかな、程度。
そこまではまあ、ふつうの人。その「ふつう」から「コーヒー好き」に舵を大きく切るきっかけになったのが、あのスターバックス。日本にはじめてできてわりとすぐに行く機会があって、なにも知らずに看板メニューのスターバックスラテを、オススメされるがままに飲んで、衝撃を受けた。
コーヒーとミルクを合わせただけじゃない、なんだこの味この風味……コーヒーじゃなくて、エスプレッソ? エスプレッソってなに? って。
そこからは、もう、通いまくり。飲むのは毎回スターバックスラテ。当時から女子に人気だったキャラメルマキアートは、甘過ぎてだめ。
しばらくしてタリーズ、シアトルズベスト、ほかにもたくさん、いわゆるシアトル系コーヒーチェーンができて、それを見つけてはカフェラテを飲んでいた。
ちなみに、当時よく行っていたスターバックスは赤坂見附にあったお店。テレビ局TBSのそばで、しかも、ちょうど細い道を一本隔てた向かいにタリーズがあって、ずいぶんと挑戦的だな、と思った記憶がある。タリーズが。
すっかりカフェラテ大好きになっていたぼくに衝撃的な出会いが訪れたのは、それからしばらくしてのこと。
99年のある日、東京は大田区蒲田のアーケードにある、もう名前すら覚えていない、なんとかカメラ? 的なお店で、デロンギのエスプレッソマシンを発見する。BAR14という、なんともかわいらしいマシン。これがあれば家でカフェラテがつくれる! とばかりに、即、お買い上げ。
どうやってつくるのか、エスプレッソの淹れ方もまともに知らないド素人。当然、そう簡単にうまくはいかないのだった。
つづく。