一度手に馴染んでしまうと、なかなか別のものを使う気にならないのがタンパー。
今愛用しているのは、自転車用ヘッドパーツでおなじみのChriskingのタンパーだけれど、ぼくが買った5年前は底面が平らなフラットのベースしかなく、今の今までずっとフラットを使っていた。
ところがその後CONVEXのベースを装着したモデルが発売になり、「ベースだけ別売りしてくれないかなー」と思っていたところ、いつの間にかベース単品で買えるようになっていたので買ってみた。
CONVEXは、タンパーベースの底面がフラットではなく、中央からフチにかけて高低差があることが特徴。ChriskingのCONVEXベースはいわゆる AmericanCurve ってやつなのかな。高低差が小さくて、フラットと比べても大きな差がない。でもCONVEXはCONVEX、どんな使用感なのか!?
なぜCONVEXは凸状になっているか
そもそも、どうしてCONVEXのタンパーは凸状になっているかというと、それは「チャネリングを防止する」ため。
チャネリングとは、コーヒーのパックにいわゆる水の通り道「チャネル」が発生すること。これが起きるとチャネルに集中的にお湯が流れてしまうので、結果、コーヒーにまんべんなくお湯が浸透せず、エスプレッソが水っぽくなったり、味が薄くなってしまう。
じゃあ、どうしてチャネリングを起こしてしまうのか?
答えはわりとシンプルで、圧力をかけたお湯は、とおりやすい場所から流れようとするから。それは、例えばコーヒーとフィルターバスケットの間だったり(いわゆるサイドチャネル)、タンピングにムラがある場合は、もろい場所が真っ先に狙われる。なかでも、サイドチャネルはどんなにていねいにタンピングしても発生するときにはしてしまう厄介者。
そこで、押し固めたコーヒーを凹状にして、圧力を中央に集中しやすくしよう、という考えで生まれたのが、ベースが凸状になったCONVEXというわけ。
まぁ、そんなに簡単にいくものなのかねぇ……とは思っていたけど、果たして。
↑穴のようなものがチャネル。多かれ少なかれできるものだけど、ひどい場合は味に影響する。これはひどい例。
一ヶ月ほど使ってみた印象
というわけで、CONVEXのベースを一ヶ月ほど使ってみた印象としてはこんな感じ。
- サイドチャネル、起きるときは起きる
- しかもその頻度がなぜかフラットより多く、相対的にひどい(上のチャネルの写真がまさにそれ)
- きちんと淹れられてもエスプレッソの粘度がフラットよりも低い
- フラットよりも味の厚みが劣る
というわけで、個人的にはフラットのほうが好みである、という結論になった。うーん。
サイドチャネルがゼロになるとは思っていなかったけれど、フラットよりも発生率が高いのが謎(誤差の範囲で径が小さいとか?)。言い替えると、フラットよりも抽出が安定しないということで、ぼくとしてはガッカリ。せっかく買ったのになー。
あと、うまく淹れられても、フラットよりもエスプレッソの粘度が低く、甘味も含めて味の厚みがやや乏しいと感じた。あっさりしている、とも言えるから、こっちが好きな人もいるとは思うけれど。で、たぶんこれはチャネルが発生しているからだと予想(でもフラットだと、仮にチャネルが発生しても、ここまで味のブレは大きくない)。
それにしても、高低差が小さいAmerican Curveでここまで変わるとは予想外で、高低差がより大きいEuroCurveだったら、もっと差がつくのかな。
じつは昔、Reg Barberのタンパーを使っていたとき、同様にサイドチャネル対策でCフラットというフチの部分が面取りされているベースを買って試したことがあったけれど、それも使い勝手がしっくりこず、結局フラットに戻したという経験がある。ぼくにはやっぱりフラットベースが性に合っているのもしれないな。