nine.ten coffee weblog

おうちカフェ「nine.ten coffee」のブログです。今のところ単なる趣味です。

開設6周年記念インタビュー:その1「カフェラテ開眼とブログの立ち上げ」

ーーこのブログ、今年の8月で開設から6年になるそうですね。おめでとうございます。

 

「ありがとうございます。いやぁ、細々とですけど、6年もよくやってますよね」

 

ーー更新頻度も毎週更新ということで、事実上の週刊ですね。

 

「そうですね、週末更新というペースは維持したいなと。頑張りすぎず、怠けすぎず。週刊といってもチョロチョロっと記事1本書くだけなので、とりわけ大変じゃないですよ。前は週刊誌やってましたし」

 

ーー週刊誌?

 

「ええ、毎週刊行される雑誌。もっというとゲーム関係の雑誌ですけどね。これまで週刊だったゲーム雑誌というと、3つくらいしかないですが、ぼくがやっていたのはあっちのほうです」

 

ーー全然わかりませんが(笑)。

 

「そりゃね。もっとも、それだけじゃないですけど。もちろん今はないですし、まぁ過去の話ですよ。このブログでたまーにゲームの話をブッ込んでくるのは、そういう下地があるからです(笑)」

 

ーーなるほど。ちなみに編集さんだったんですか?

 

「いえ、ライティングのほうですね。編集さんから仕事をいただいて、原稿を書く、と」

 

ーーつまり、ライターだ。どのくらいやっていたんですか?

 

「最初は編プロにつとめていて、その後フリーになって。トータルでいうと、それなりに長く。ゲームの3D黎明期とでも言うのかな、ちょうどグラフィックの表現が2Dから3Dへと移り変わっていくタイミング、その時期をメインに。あのころは楽しかったなあ」

 

ーーどうして辞めちゃったんですか?

 

「つまらなくなったから(笑)」

 

ーーそれはまたシンプルな……。

 

「いや、ほら、ぼくね紙媒体が好きなんですよ。ずっと紙をやっていたんですけど、ちょうどWeb媒体が普及してきて、次第に情報の流れが紙からWebにシフトしていった。で、Webの強みって速報性じゃないですか。紙も負けじとそれに追従していって……という時代になった。だけど、紙だとどうしてもデザインだとか印刷だとか配本だとか、手間と時間がかかるから、到底Webにはかなわないわけですよ。読者が求めているのは、そういう鮮度が良い情報のウェイトが大きくて、ある特定のタイトルだとかカルチャーみたいなのを掘り下げた考察記事のようなものは、一部を除いてあまりウケが良くなかった」

 

ーーほう。

 

「つまり紙もどんどん企画モノというか、おもしろいことができなくなっていった」

 

ーーそれはゲーム雑誌に限らずありそうですね。紙媒体という意味では。

 

「そう。だから週刊誌以外にも月刊誌もいくつかというか、覚えていないくらいイロイロやっていたんですけど、総じて流れは同じで、おもしろい雑誌がどんどん淘汰されていって、つまらなくなってきたので辞めた、と」

 

ーーやめたあとは?

 

「会社員になりました(笑)」

 

ーーまさかのサラリーマン。

 

「ええまあ。普通の9時17時の日本的な会社じゃないですけどね」

 

 

ーー話がだいぶ脱線しましたけど(笑)、ブログに話を戻して、なぜブログを立ち上げようと?

 

「ぼくはカフェラテが好きでずっとハマっているんですが、カフェラテをつくるためにはエスプレッソマシンが必要で、エスプレッソマシンに関する日本語の情報って、あんまりなかったんですよ。当時はね。今はそれなりにありますけど。だからぼく自身がエスプレッソマシンを使ってきて、使い方だったりコツだったり、そういう初心者向けの情報を発信して、もっとエスプレッソマシンが身近な存在になっていってほしいな、なんて思いがあったことがひとつ。で、せっかくやるんだったらエスプレッソマシンに限らず、コーヒー全般に視野を広げて、なんらかの情報発信ができたらいいな、と思ったのがひとつ……そんな感じですかね」

 

ーー最初のエスプレッソマシンはデロンギでしたっけ?

 

「そう、デロンギ。BAR-14ってやつ。蒲田にある、どっきりカメラのキシフォートで買いました。8000円くらいだったかな」

 

ーーすぐに使いこなせました?

 

「全然。グラインダーがないからスタバで挽いてもらったりして、お店にはいろいろとご迷惑をおかけした次第」

 

ーーどうして突然マシンを?

 

「スタバとかタリーズとか、いわゆるシアトル系カフェが日本に上陸して、カフェラテというものを知って。エスプレッソとミルクの組み合わせ最高だな、と。あるとき、これは家でつくることはできないのか? と考え始めるようになって、エスプレッソマシンを買えばつくれるということを知ったんですが、とはいえお店のクオリティがすぐに出せるわけがないという先入観から、しばらくマシンを買うということを忘れていたんですね。そんな折、たまたま入った蒲田のキシフォートで見つけてしまった、と」

 

ーー運命的な出会いですね。

 

「そう、あのときどうして蒲田へ行っていたのかは覚えていないんですけど、キシフォートに入らなかったらエスプレッソマシンは買っていなかったかもしれない」

 

ーー当時はスタバとか、シアトル系カフェはよく行ってたんですか?

 

「行ってましたね。なかでも好きだったのは赤坂見附にあったスタバ。もうないけれど。あのお店、深夜まで開いていて、夜になるとほんと客が少なくなるんですよ。2階建てになっていて、上に上がるとゆったりできるソファがドーンとあって。だから、編集部からの帰りとか、よく寄ってましたね」

 

ーーエスプレッソマシンを買ってから、生活スタイルは変わりました? それこそスタバの利用頻度とか。

 

「ラテをつくれるようになってからは、ホント利用頻度が下がった(笑)。これはもう露骨に。だけど、まともにラテがつくれるようになったのはグラインダーを買ってからなんですよ。それまでは右往左往してた。なにがダメなんだーって」

 

ーーグラインダーの必要性に気づくまで?

 

「そう。最初はマシンだけあればなんとかなると思ってたんですよ。だって、店で豆を買うと“お挽きしますか?”と必ず言われるし、業務用のグラインダーで挽いてもらえるんだから文句ないだろうって」

 

ーー初心者あるある。

 

「なんの疑いもなく挽いてもらって、いざ家で抽出しようとすると……出ない、とかね(笑)。もう、どうしてなんだーって。で、自分で微調整できないとダメなのかも? と思い始めて、買ったんですよ、デロンギのKG100ってグラインダーを。そこからはもう家でカフェラテつくって、飲みまくった。で、気づいてしまったんですよね」

 

ーーなにに?

 

「カフェチェーンレベルのカフェラテを家でつくるのは難しくない、ということに」

 

ーー業務用のマシンと家庭用マシンの差はあると思うんですけど。

 

「もちろんあるんだけど、家庭用マシンでもちゃんとやれば至極の一杯を淹れることはできるんですよ。業務用のように、何杯も連続で安定してつくることはできないですけどね。ただ家庭用はスチームが弱いから、そこだけは業務用と同じというわけにはいかない。だけど、逆に言えばそのくらい」

 

ーーわりと簡単にそのレベルに到達した?

 

「というか、豆を適切に挽いてきちんとエスプレッソを抽出すれば、おのずとそのレベルのカフェラテができてしまうんですよ。ただし“適切に挽く”ということが初心者にはハードルが高くて。といっても微調整するだけなんですけど、文字どおり、グラインダーの微妙な調整なので、それなりのモチベーションがないとやる気にならないというか」

 

ーー挽き目の調整って、トライアンドエラーでしか調整できないですしね。

 

「そう。そこでいろいろ経験して、グラインダーの大切さを知ったんです。言い換えれば、挽き目(メッシュ)の調整の重要性だったり、逆にいえばタンピングってじつはそれほど重要じゃないとか、いろいろね」

 

ーー初心者って、どうしてもタンピングとか、カタチから入りますからね。

 

「それは自然なことなんですよね。ぼくもレッジバーバーのタンパーに憧れたから(笑)」

 

ーー結果的に、そんなふうにBAR-14がいろいろと変化をもらたしたわけですね。コーヒーライフに。

 

「そうですね。BAR-14とKG100って、典型的な入門機の組み合わせなんですけど、本当に勉強になりました。いちばんの収穫は、良い豆を使うとチェーン店を簡単に超えられることで、そればますますカフェラテ熱に拍車をかけた格好ですね」

 

ーーいよいよ豆にこだわりはじめた、と。

 

「“鮮度”というワードを知ってしまった(笑)」

 

ーー焙煎してから日が浅いほど鮮度が良い、って概念ですね。きっかけは?

 

「赤羽橋にあったマキネスティというカフェ。ラテアートの先駆け的なお店であると同時に、豆へのこだわりがハンパなくて」

 

ーー自家焙煎していたとか?

 

「いや、逆なんですよ。あそこは“ESPRESSO VIVACE”というシアトルの名店の豆を使っていたことでも知られていたんですけど、鮮度を維持するために、わざわざ空輸していたんです。コーヒー豆を空輸ですよ? だから買うとけっこうな値段だったんですけど、そこで買った豆でエスプレッソを抽出すると、もう、クレマがすごい。カフェチェーンとは雲泥の差。後にその過剰なほどのクレマの正体はロブスタが一因であることを知ることになるんですが、当時は鮮度が良い豆はこんなにクレマが出るんだ! と思って、そこで開眼しちゃった。しかも美味しいから、鮮度が良い豆は味も良いんだ、って。今思うと突っ込みどころが多い思い込みなんですけど、それでも当時のぼくはそう理解しました」

 

ーーあながち間違いではないですけどね。

 

「今だから話すんですが、家庭用エスプレッソマシンでもカフェチェーンを簡単に超えられる、ということを知ったぼくは、初心者向けの家庭用エスプレッソマシンの使い方をまとめた本をつくろう、いや、つくりたい、と思っていた時期があって」

 

ーーライターならではの発想(笑)。

 

「なんでも仕事にしちゃう(笑)。事実、スタバとかタリーズとか、そのへんのカフェラテよりも美味しくできるんですよ。しかも簡単に。押さえるべきところを押さえるという条件はあるにせよ、その事実をみんなに知ってほしい! という思いから、けっこう真面目に企画と構成を考えて」

 

ーーで、それはカタチになったんですか?

 

「うーん、それが、いろいろあって構想のまま終わっちゃった」

 

ーーそれはもったいない。

 

「ターゲットがニッチすぎたんでしょうね(笑)。ほら、今でもコーヒーを豆から挽いて淹れる人って少数派でしょう? ましてやその当時、エスプレッソマシンでどうのこのって、マーケット的にピンポイントすぎるでしょう」

 

ーー早すぎた?

 

「のかなーと」

 

ーー逆に、今のコーヒーシーンを見てどうですか? そういう入門書がいよいよ受け入れられる土台が整ってきたとか?

 

「いや、むしろ今のほうが難しいんじゃないかとは思います」

 

ーーそれは意外ですね。

 

「というのも、相変わらず家でエスプレッソマシンというニーズが日本ではごくごく少数派というのもありますけど、今ってコーヒーの楽しみ方が昔よりも多様化していると思うんですよ。ドリッパーひとつとっても、昔と今だと種類の多さが全然違うし、淹れ方もプアオーバーはもちろん、フレンチプレス、エアロプレス、サイフォン……本当にいろいろあって、レシピも違ってそれぞれに楽しさがある。エスプレッソは所詮、そのなかのひとつでしかなくて」

 

ーーつまり、特定の抽出方法のノウハウをあえて取りあげる意義がない?

 

「端的にいうとそう。そもそもエスプレッソだって、バリスタの数だけ作法なりレシピがあったりする時代ですしね。それでも切り口を“家庭で”としても、うーん、どうなんだろうと。だいいち、今はそのへんの役割は全部YouYubeだから(笑)」

 

ーーそれ言っちゃう(笑)。

 

 

(つづく)