早いものでKaldi Fortisを使い始めて1年になっていた。早いなぁ。いやぁ、早い。
『Artisan』のログを数えてみたところ、この1年で焙煎したバッチ数は、だいたい140強。毎週1回、だいたい2〜3バッチを基本としているので、まぁ、こんなもんかな。
プロファイルの前に、あらためてぼくの好みの傾向から書いておくと、ざっくりこんな感じ。
・なんといってもコクと甘み重視(主にカフェラテで使用)
・苦味寄りのコーヒーは好みじゃない
・かといって酸っぱいのも嫌
という、どちらかというとバランス型の飲みやすいコーヒーを好む。
以上を前提として今のプロファイルをざっくりご紹介。ちなみに使っているのは直火型、生豆の投入量は250g。
1:20分くらいかけて余熱
余熱はゆっくり&じっくり。20分くらいかけてET250/BT230を目安に余熱する。
余熱については試行錯誤した結果、こうなっているんだけれど、ET250度をメドに余熱しておくと、最初のバッチでも2バッチ目以降と同じように焼けるので、楽なのだ。
それまでは「1バッチ目だから投入温度を10度上げよう」とか考えていたんだけれど、しっかり余熱しておけばそんなのは必要ないことがわかった。
そうそう、余熱時のブロワーは1.25。ブロワーの強さでETの上昇率が大きく変わるから、一定にすることが大事。
2:BT130度で豆投入
余熱が完了したら火を消して(ブロワーはそのまま)BTが下がるのを待ち、BT130度で豆投入。
だいたい今の季節、250gの生豆を投入すると、うちではBTが-40度程度下がって90〜95度くらいをボトムとして、そこから上昇に転じる、という温度変化になる。
これ季節(というか室温?)によって変わるから、寒い時期は投入温度を上げる。
ブロワーは1.25のママ。
3:6分〜7分後にドライエンド
豆を投入したら6分〜7分でドライエンド、俗に言う“ゴールド”を目指す。
これにはある程度の火力が必要(後述)。
投入温度を高くすれば初期火力を絞ることができるけれど、豆の温度は上がっても豆の色が変化しない、という状況になってしまうので火を必要以上に小さくするのは避けたほうが無難。
ちなみにドライエンドの基準は、豆の色が黄色っぽくなったタイミング。“白っぽい”から“黄色っぽい”になったタイミングね。
そうそう、以前はこのあたりでチャフ飛ばしをしていたけれど、最近はやらなくなった。メッシュプレートを排除したら焙煎機内の空気の流れが良くなったのか、あえてチャフ飛ばしをしなくてもシリンダー内のチャフ残量が少なくなったから。
Tips 初期火力とブロワーとのバランスが大事
投入温度って人によってイロイロと考え方があると思うけれど、なぜ130度投入でボトム90度くらいを目安にしているかというと、豆を投入後、ドライエンドまでに持っていく時間と初期火力とのバランスが良いから。
例えば6分で160度まで持っていきたい場合、投入温度を高くすると、その分、ボトムも高くなるので初期火力を絞る必要がある。
“じゃあ、絞ればいいじゃん”なんだけれど、ブロワー1.25のままで火力を絞ると、今後はシリンダーに冷気が入ってしまうのか温度上昇が予想以上に鈍ってしまい、困ったことに6分で160度を達成できなくなる。上で「ある程度の火力が必要」というのは、そういうところから。
ではブロワーを弱くすればいいじゃないか、となるんだけれど、じつはKaldiのブロワーは調整幅が狭すぎて(1あたりにするとファンが回らなくなるとか)、微調整は現実的じゃないので、できるだけ変えたくない。だからブロワー1.25でも必要な温度上昇が見込める初期火力を重視している。
ちなみにウチの場合「タフまる」本体メモリのふたつめ強くらいを初期火力としている。
4:火力を上げて1ハゼに突入
豆が乾燥して黄色くなりはじめたらドライエンドの合図。
そこから火力を一気に上げて1ハゼまで持っていく。どのくらい火力を上げるかというと、うちの場合は「タフまる」基準でメモリ3つと半分、つまり3.5くらい。
あとは1ハゼを待つ!
5:1ハゼがきたら30秒後に火力ダウン&ブロワーアップ
1ハゼがパチパチきはじめたら、そのまま30秒待つ。これはサンプルロースター時代からのコクと甘みを引き出す“おなじまい”のようなもので、どれくらい意味があるのかは不明。たぶん、気持ちの問題。
30秒後、火力を少し絞って(タフまるのメモリ3つめ弱くらい)、ブロワーを少し(1.5)上げる。
で、そのまま2ハゼを待つ。
6:2ハゼピーク少し前くらいで煎り止め
1ハゼが1分ちょっと続き、そのあとやや間隔をあけて2ハゼが始まる。
テストスプーンで焼き色を見つつ、豆温度を見つつ、ココだ! というタイミングで排出して終了。
だいたい、ぼくは2ハゼのピークの少し前くらいで煎り止めることが多いかな。豆温度にして233〜235度くらい。
たぶん一般的には、1ハゼ以降は火力を落として、いわゆる「デベロップメント」をたっぷりととって焼き上げるプロファイルが多いと思うけれど、ぼくの場合は、そこはあっさりめにしている。
あっさりというと語弊があるかな。別の言い方をすると“強めの火力で駆け抜けている”という感じ。
1ハゼ以降にある程度強めの火力を維持すると、よりコクと甘みが引き出せて、かつ豆の個性も残りやすい気がするから。
ちなみに時間にすると、1ハゼ開始から約2分〜2分30秒後に煎り止め、というペース。だから1ハゼ以降の豆の変化が早く、モタモタしていると焼きすぎた、なんてことによくなるんだけれどね(泣)。
ちなみに、ぼくがやっているのは、巷によくある“1ハゼ以降の温度上昇は何度以下じゃないとダメ”とか、その手のRoR情報は一切無視した独自プロファイル。
いろいろやってみた結果、こういう焼き方で焼いた豆の味が好きだった、というだけなので、万人におすすめできるものではありません、ハイ。
焼き上がった豆は、香ばしく、甘〜い香り。
焼きたての豆の香りを嗅ぐと、なんともいえない幸せな気分になる。
ちなみにこの甘い香りは、チャフがシリンダーに残っていると出てこない香りで、アウベルでは感じられたけれどサンプルロースター時代は諦めていたもの(サンプルロースターではチャフが取れないからね)。
だけれど、ブロワーでチャフを除去できるFortisでは、この甘い香りを引き出せるのです。そういう意味でもFortisはとても気に入ってる。
こんな感じでチャフトレイにけっこうな量のチャフがたまるので、1バッチ焼くたびに捨ててやる必要があるけれど、これだけ取れているおかげで、豆の味はサンプルロースターに比べるとだいぶクリア。
先も書いたように、メッシュプレートを取り外すプチ改造をする前よりも回収量が多いので、ある意味、この改造は正解だったのかも。
ひとクセあるブロワーの話
最後に、チャフコレクター&クーラーの話を。要はブロワーね。
Fortisとブロワーは別売りなんだけれど、多くの人が一緒に購入しているはず。このブロワーが、これまで何度か書いてきたけれど、調整しづらい……。具体的に言うと、低風量時の調整幅が壊滅的に狭いのだ。
調整幅そのものは0〜9まである……のだけれど、ぼくが250gの焙煎で使っている調整幅は上の写真の1.25の位置と、ほんのわずかに強くした1.5の2ヵ所のみ(笑)。
見てのとおり1.25だってメモリがなく、1と1.5の間っていうだけの話で。実際、1.25と1.5、このわずかな違いでもファンの回転数は音でわかるほど変わる。
そうかと思えば、1未満の領域になるとファンが回らないという……。
しかも2以上になるとかなり風量が出てくるので、生豆を500gとか入れても2はともかく3以上はあまり使えないんじゃないかなーという印象。
ね? 狭いでしょう?
これがねー、最初は本当にアタリがわからなくていろいろ試した。風量を強くすると、香りは出やすいけれどコクが犠牲になり、風量を弱くしすぎると、今度は逆になる。
投入量によって最適な風量って変わるから、好みの味になるポイントを探るしかなく、ぼくはとりあえず1.25と1.5で落ち着いた感じ。本当はもっといろいろとやりようがあると思うけれど、ブロワーは排気温度ETにモロ影響するので、焙煎の安定性を重視して妥協した、とも言える。
そんなこんなでKaldi Fortisを使い始めて1年ちょっと、感想としては大満足。
最初はカセットコンロで安定して焼けるのか不安だったけれど、これもまったく問題ないかな。鋳物コンロと微圧計を使ったらより安定性が向上するかもしれないけれど、現状、カセットコンロでの安定性にさほど不満がないので、なにかない限りはこのままいく予定。
あ、そうそう、うちはマンションなので焙煎するたびにセッティングが必要で、最初はセッティング完了までに10分ちょっと要していたけれど、最近は5分弱でできるようになった。慣れってすごいね(笑)。
というわけでセッティングに5分、暖気に20分、そこから1バッチあたり20分(データ整理、釜の冷却等モロモロ込み)というのが焙煎にかかる時間。
焙煎が終わったら冷却に10分程度(70度程度まで冷ます)、片付けに5分、という感じかな。暖気や冷却に要する時間はサンプルロースターよりもかかるけれど、焙煎そのものの楽さで言ったら断然Fortis!
これを体験したら、もう手回しには戻れない(笑)。