昨年公開した焼き方から、ほんの少しだけ変わったところがあるので、2018夏版を公開。
2017年夏版のメソッドは、基本的にブラジルでカフェラテをつくったとき、ぼく好みの味するために試行錯誤した結果のものなので、豆が変わるとそのままではうまくいかないケースが出てくる。例えばサイズが大きかったり、標高が高くて硬い豆だったり。
そういう豆を2017メソッドで焼くと、ときとして雑味が残ることがあった。もちろん、残らないこともあるけれどね(このへんが難しいところ)。
で、どうしてだろう? と考えた。
至った結論としては、“焼きの工程に入るまでに豆内部の水分が飛びきらずに残ってしまった結果なのではないか”と考え、豆を投入して焼き工程に入るまでの時間を1分ほど長くとることにした。
これがとても具合が良くて、最近はブラジル以外の硬そうな豆は基本的にこの方法で焼いている。
そう、じつはこれが2018メソッドの大きな変更点。ほかの細かい変更もあわせて、順を追ってご紹介。
1:余熱をする
2017メソッドと変わらず。ざっと5分くらい余熱。目安は台座がほんのり暖かくなるくらい。
2:8分で160度を目指す
2017年メソッドでは7分で160度を目指していたところを、1分延長して8分で160度を目指す。つまり、よりゆっくりと温度を上げていく。ただし、ブラジルだけは7分で160度のママ。
3:中火にして1ハゼを待つ
2017メソッドと変わらず。160度になったら、火力を中火(カセットコンロの中火を最大火力としているので、事実上の火力最大)にして、焼きに入る。
4:1ハゼが始まったら火力そのままでしばらく待つ
1ハゼが開始してからの工程も2017メソッドと2018メソッドで違うポイント。
2017メソッドは
・1ハゼ開始の温度から火力そのままで+5度まで待つ
・+5度に到達したら、火力を少し絞って排気穴を3/2開ける→のちに2ハゼでさらに開ける
というところを、2018メソッドでは
・1ハゼ開始から火力そのままで30秒間待つ
・30秒経過したら、火力を少し絞って排気口を3/2ほど開け、その後も変えない
としている。
+5度=30秒くらいだったので、よりわかりやすくタイマーで30秒としたことに加え、もうちょっと味に“濃さ”が欲しかったので排気を絞り気味にした。
ナチュラルの豆の場合、火が通りやすいので1ハゼ以降の火力は、ウォッシュドよりも絞り気味にする必要がある。
それにしても、こんな小さな焙煎機で、しかもカバーは自作の簡易的なものなのに、排気量を調節するだけで味をコントロールできるのには少々驚いた。やっぱりこの手の小さな焙煎機にもカバーと排気の調整機能(いわゆるダンパー)は必要かも。
5:2ハゼを迎え、240度付近で消火し余熱で仕上げ
2017メソッドと同じ。240度手前くらいで火を消し、最後は火を消して余熱だけで仕上げる。
6:ざるへ移してドライヤーで冷却
2017メソッドと同じ。
ちなみに、2017年に公開したサンプルロースターでの焙煎方法がこちら。
この1年で学んだこと
この1年で学んだことをちょっと書いてみる。あくまで個人的な見解なので異論もあるかもしれないけれど。
■味がブレるときは豆の量を増やしてみる
焙煎をしているなかで、なにより気にしているのが味の再現性。毎回ブレるようだと何も評価できないからね。
そのブレの最も大きな原因と思われるのが、温度上昇の差。例えば、同じ豆でも1ハゼを迎えるタイミングが、あるときは9分、あるときは12分、というのではダメで、毎回同じタイミングでハゼるようにすることが望ましい(と思う)。
同じ時間でハゼるようにするには、同じ豆の量、同じ火力でカロリーを与えていくのは当然として、一度に焙煎する豆の量を多くするとうまくいきやすい。温度上昇がゆっくりになるので、ねらったタイミングでねらった温度に持っていきやすくなるからだと思う。
例えば、ぼくが使っているサンプルロースターは最大250gだけど、150g以下で焙煎すると火力調節に対する温度変化が大きくなりやすいので、どうしても特定のタイミングで何度にする、という指標から外れやすくなり、結果的に味の再現性に影響してしまう。ところが、1回あたり200gとか250gで焼き初めてからは、味のブレが気にならないくらいには安定するようになった。100gで焙煎していたころは、本当に安定しなかったから。
再現性に悩んでいて、かつ少量で焙煎している人は、一度豆の量を見直してみるいいかも。
ただ、一度の焙煎量を多くすると、ホームユースだと消費スピードとのバランスがとれなくなるのが悩ましいところ……。
■味の善し悪しは生豆の質でほぼ決まる
焙煎を初めてしばらくは、あえてあまり多くの種類の豆を焼かず、目星をつけた豆をとことん練習するというところにこだわっていた。
「あまり美味しくないなぁ」と感じた豆でも、豆が悪いのか焙煎が悪いのかがわからなかったから、というのが大きな理由(でも焙煎が悪いと思っていた)。
ある程度安定して焼けるようになって、あれこれといろいろな産地の豆を焼いてみて最近常々感じていることが「味の善し悪しは生豆の質でほぼ決まる」ということ。
言い換えると、質が悪い生豆をどれだけ研究して丁寧に焙煎したところで不味いものは不味いし、質が良い生豆のコーヒーにはかなわない、ということ(もしかすると本当に焙煎技術が未熟なだけかもしれないけれど)。
質が良い豆は、けっこう適当に焙煎しても不味くなることがあまりないけれど、質が悪い生豆は、なにをどう工夫してもダメだったりする。料理と同じで、やっぱり原料の質の差は大きいんだなと。
なので、最近はあまり安い豆は買わず、そこそこ良い豆(少し値が張る豆)を選ぶようにしている。
じゃあ、その“豆の質”ってどこで決まるんだ? という素朴な疑問が残るのも事実。
ぼくなりの解釈だと、質が良い生豆というのは
・栽培環境が整っている(気候・人)
・精製環境が整っている(水資源・設備)
・土壌に恵まれている
のいずれか、もしくは複数が該当するケースだと思う。
当然と言えば当然だけれど、人の手が介入するほど豆の質も向上し、そしてそれは当然のごとく即、価格に影響するので、値が張る豆ほど質が良いということが言えるのではないかと(一部の稀少豆は例外としてね)。
なので、美味しいコーヒーを飲みたいのであれば、安い豆は敬遠すべきなのかもしれない。
■基本的には新しい豆ほど美味しい
コーヒー豆も農作物なので、収穫年度によってどうしても品質にバラつきが出るけれど、それはさておき、それとは別に何年に収穫したものなのかを最近は気にするようになった。
さすがに常温保存している業者はいないと思うけれど、生豆でも時間が経てば劣化してしまうのは明らかなので、収穫年度を公表している業者から、より新しい生豆を最近は買うようにしている。だいぶ絞られちゃうけれどね。
生豆の状態では劣化しにくいとはいえ、劣化しないわけではないので、収穫から時間が経てば経つほどにやっぱり味は落ちてくる。前は「そんなの微々たるものでしょ」と思っていたけれど、最近は「案外大きいかも」と感じるようになって、うちでも春以降は常温保管していた生豆をワインセラーに入れて保管している(気分の問題)。
……というわけで、自分が焙煎したコーヒーの味に不満がある人は、以上のことを気にしてみてはいかがでしょう、と。
と、偉そうなことを書いているものの、ぼく自信まだまだ未熟で経験値が足りないので、精進しないと。