韓国滞在中に、おもしろいコーヒーショップに行ってきた。ソウル郊外の北漢江という、ソウル中心部を流れているあの“漢江”の上流に位置するお店。
正直、かなり行きづらいロケーションで、クルマで行かないと無理かも。今回はたまたま近くに用事があって、ぼくがコーヒー好きなこともあって、家族そろって連れて行ってもらったのです(ありがたい)。
その名も「WALTZ & DR.MAHN」。
川沿いに建つ赤い建物が目印。ここは、レストラン兼コーヒーショップ兼コーヒー博物館で、ソウルのなかでも知る人ぞ知るお店なんだとか。とりわけレストランの評判は高く、有名人や著名人がお忍びで訪れたりもするらしい。
場所はココ。
このお店、じつは日本に縁があって、なんでも創立者のパク・ジョンマン氏がかつて日本で「ワルツ」というカフェで働いていたことをきっかけに、自分のお店に“ワルツ”という名前を使っているのだとか(提携しているわけではないみたい)。
「ワルツ」ってコーヒーショップ、聞いたことがなかったので軽く調べたところ、名古屋を中心にしたコーヒーチェーンみたい(本当にそこかどうかは未確認だけどね)。
この「WALTZ & DR.MAHN」、ロケーションがとにかくいい。お店は静かな川沿いにあって、すぐ横にサイクリングロードが走っている。
ちなみにこのサイクリングロード、なんでも廃線を整備してつくられたものらしく、全長はかなりの距離になるのだとか。しかも羨ましいのが、途中、けっこうな頻度でレンタル自転車屋、カフェ、軽食屋などが併設されていて、サイクリストの良い休憩スポットになっていること。今度韓国に来たときは自転車借りてでサイクリングをしてみたいなぁ。
話をカフェに戻そう。
店内はオシャレなレストランフロアと、わりとこぢんまりとしたカフェフロアにわかれていて、レストランフロアがいいなーと思っていたら「子供は入れない」とのことで、カフェ側へ(泣)。まあ仕方ない。
で、このときのウェイターさん、ぼくが日本人ということに気づいたのか「日本の方ですか?」と話しかけてくれて(韓国語でね)、これをきっかけにして、いろいろと気を遣ってくれたのが印象的(これがなかなかレアな体験だったので、この話は後述)。
さて、メニューを開くと……なるほど、と言わずにはいられないラインナップ。
言ってしまえば、昭和の時代にあった、コーヒーにこだわった喫茶店のそれ。
なにしろメニューのいちばん最初にあるのが“ブルーマウンテン”だからね。ブルーマウンテンってワード自体、久しぶりに見た気がするよ。
とはいえ、コーヒーの種類はかなり多くて、いろいろと悩むご一行。
ぼくはこういう店にくると、まずお店の顔“ハウスブレンド”を頼むので、メニューの最後のほうにあったハウスブレンドを注文。奥様はエチオピアのモカハラー。モカハラーは前に自分で焼いたときに、あまりのスパイシーさに衝撃を受けた豆だったので、なんとなくオススメしてみた(笑)。
あとはワッフルを注文(20分くらいかかるらしい)。
しばらく待っていると、コーヒー到着。
すると「日本からいらしたということで、ノリタケのカップに入れさせていただきました(韓国語で)」とウェイターさん。
おおお〜。こういう心遣いがうれしいじゃない。
ノリタケはウチでも奥様がティーカップのセットを持っていて、お気に入りなのです。
ノリタケのカップでいただくハウスブレンドのお味は……!?
おおおお!
こ、これは……昔懐かしの喫茶店の味だ……というのが第一印象(笑)。
コモディティの味というとわかりやすいかも。ライトボディで、ちょっと酸味が強くて、かつ、失礼ながらも、どことなくクリアさに欠ける味。
昔、喫茶店で飲んだコーヒーはこんな味で、子供にはこれがちょっと苦手で、いつも砂糖とミルクを入れて飲んでいたっけ。
あえて昔ながらのレシピでブレンドつくっているんだと思うけれど、もっと良いグレードの豆でブレンドつくればいいのに……と、ちょっと思ったり。
いっぽう、奥様のモカハラーは、ぼくが焙煎したときのようなスパイシーさはほぼ感じず、わりと上品なモカって感じで、「普通に美味しい」と奥様。たしかに美味しかった。
そうこうしていると、ワッフル到着。
ビジュアルもさることながら、量の多さがまさに韓国(笑)。韓国のスイーツは基本、量が多くて、シェアすることが前提のプレーティングになってます。
しかも、これがかなり美味しい!
サクふわの食感で、かつ甘すぎないのがとてもいい。このワッフルだけで、このお店のレストランのレベルの高さがわかる感じ。ごちそうさまでした。
さて、コーヒーとワッフルを堪能したあとは、併設されているコーヒー博物館へ。
ちなみに、上の写真の左の扉が博物館、右奥がレストラン&カフェの入り口ね。
博物館の入り口を入ると、おなじみのフレーバーホイールやら産地の人の写真やらが多数展示されていて、なかなか気分が高まる。受付はこの階段を上がった先。
博物館のお客さんはぼくたちだけ(ちなみに夫婦で入場)。
ちなみに受付のお姉さんによると、入場料はひとり1万ウォン(1000円)なんだけれど、下のカフェやレストランを利用すると8000ウォン(800円)になるらしい。
館内は、これがなかなか見応えたっぷり。いろいろな産地の生豆、歴史を感じるコーヒーミルの数々、歴代のコーヒーマシン、書籍、韓国のコーヒー文化を伝える古い新聞、このお店の昔のメニュー表などなど、貴重な品々が数多く展示されていた。
さすがにすべての写真は撮っていないけれど、本当にいろいろな資料が展示されていておもしろい。
聞くと、創設者であるパク・ジョンマン氏がすべて自分で集めたコレクションだそう。
ひととおり見て回ったら、男性の方がきて「ドリップ体験しましょう」と(笑)。
普段、家でもやってるから大丈夫です、と言いかけたけれど、せっかくだから奥様がやってみることに。
豆を挽くところからはじまり(ミルがプロペラ式だったのが残念)、ペーパーをなぜリンスするのか、そしてドリップの作法みたいなのを順番に教えていただく。
ここで使っている豆の詳細はわからないけれど、奥様、無事にドリップ完了〜。
色からもわかるように、かなりスッキリとしたお味でした。
「カップを持ったままで良いので、こちらへどうぞ〜」と通された先は、ちょっとしたシアタールームになっていて、ここで創立者のパク・ジョンマン氏が自らの足で世界をまわり、異国のコーヒー文化をまとめたVTRの試聴会に突入。
韓国語はわからないけれど、VTRそのものはすごくよくできていることはわかった。いや、本当に、あの熱量はすごい。相当コーヒーがお好きなんだろうなぁ、と。
見終わって「おもしろかったです〜」なんて、感想を伝えていると、ココで衝撃の事実が。
なんと、ぼくたちにドリップ体験をさせてくれたこの男性の方は、創立者の息子さんということが判明!!
なんでもお父様は経営からは引退されていて、数ヶ月前からは息子さんに任されているのだとか。そう、つまりは現社長ってこと。
さらにあとから聞いた話だと、先のカフェで担当してくれたウェイターさんが「日本からの客人」ということを伝えてくれたそうで、それを聞いた現社長がわざわざ店舗にきて接客をしてくれたのだとか。
はえ〜。日本人ってだけで、こんなことある? もうビックリですよ。
いやもう、本当にその節はありがとうございました。
「じつはこの上にもフロアもあるんですよ」と、引き続き、社長直々に案内してくれたのが3Fのセミナールーム。
焙煎から抽出まで、コーヒーにまつわるさまざまな体験教室をやられているそうで、エスプレッソマシンが並んだカフェのカウンター、そして奥には多くのコーヒーノキ(韓国でコーヒー農園をやるのが夢で研究中なんだとか)、さらには焙煎機がドーンと数台設置されていて、コーヒー好きにはたまらない空間だった。
3Fではあんまり写真撮ってなくて、もっといえば現社長の写真も撮っていないのが心残りだけれど、いやー、良い体験させてもらいました。
ぼくらは一般の人に比べるとコーヒーに慣れ親しんでいることもあって、驚きこそ少なかったけれど、フラっと1Fのレストランなりカフェなりを利用したお客さんが来館して楽しむぶんには、十分なコンテンツ量だと思う。おもしろかったです。オススメ。
というわけで今回訪れた「WALTZ & DR.MAHN」。前社長のおかげもあって、日本人にやさしいお店でした。今度はぜひレストランを体験したいなあ。美味しそうだったもの。
あ、現社長発見。このサイトのいちばん下の写真に写っている男性が、ぼくらを案内してくれた現社長です。